7 三上哲雄

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 私は真っ先に、ずっと気になっていることを尋ねました。妻に、相手はいるのかと。  男は頷き、はっきりと言いました。彼女には現在、愛するパートナーがいると。  私は、すぐにあの時の友人の言葉が蘇りました。そんなこと、黙ってはいられません。 「それは、女じゃないか?」  探偵に尋ねると、男は驚いた顔を見せて、頷きました。  それで私は確信しました。妻は私に黙って、とっくに新しい道に進んでいたのだと。  そうとなると、私はじっとはしていられません。男が帰ると、すぐ妻に連絡を入れて、顔を合わす約束を申し出たのです。  もちろん、妻は、それを拒みました。  我慢が出来なかった私は、電話越しに、思いの丈を伝えました。  彼女は、はっきりとは答えてくれませんでした。しかし、狼狽したのはすぐに電話越しにも伝わってきました。  それで、私は確信しました。  私は、妻の居場所を知りませんでした。ですので、例の探偵の男から名刺をもらっていたものですから、その探偵の男に連絡を入れて、依頼をしたのです。妻のことを洗いざらい調べてくれと。  その時なんです。あなたのことを知ったのは。由希子さんを通じて。  由希子さんは、妻と同居しているようでした。理由はわかりません。探偵は、外側から見た情報しか、知ることができなかったようですから。  そして、それ以上は、何も知ることができませんでした。  その時期なんです。彼女が不幸にあったのは』 「すみません」  俺は、話を割った。 「それで、由希子とはどういう関係にあたるのでしょうか?」  恐る恐る若林の顔を見た。握る掌から汗が滲む。  俺から視線を外さずに、若林は重く口を開いた。 「あなたが、想像されている通りだと思いますよ」  彼は、はっきりとそう言った。俺の内側を見透かすように。
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