1 加藤千春

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「何だったら、本当にこの人に言ってあげようか? お宅が頼んだ事務所は、交換条件を出してきた挙句、私に金銭を求めて、調査は何も見つからなかったってシラを切ろうとしてますよって」 「そんな出鱈目を」 「じゃあ、相手に話すよ」 「もう、卑怯ですよ」 「お互い様よ」  日岡は、ため息をついた。どうやら諦めたのかと踏んだ。 「やっと話が進みそうね。で、こいつは誰?」 「その前に、あなたに聞きたい事があります」 「聞いてるのは、こっち」 「これを確認させてもらった方が話がスムーズに進みます」  腹の立つ言い方だ。 「何よ?」 「あなた、生まれてから父親に会った事がありませんよね?」 「そんな事まで調べてんの。誰が言った? 教えろ?」 「落ち着いて下さい。そんなこと言えませんよ。それに、こんなこんな事くらい、やろうと思えば誰でもできますよ」 「気持ち悪い。っていうか、それが何の関係があるの?」 「勘がいいあなたならわかるでしょ? あなたの夫からの依頼ですよ」
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