2 加藤敬介

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 調査書をテーブルの上に置いた。 「これが調べてもらった結果だよ」  千春は、その書類を手にとり、じっと見入った。  その顔は、出会ったから見せたことのない顔だった。まるで、別人だ。 「どうして、勝手にそんな事をしてたの?」  冷たい声が突き刺さった。しかし、怯む訳にはいかない。 「だって、おかしくないか? 自分の過去が有耶無耶になったままなんて。だから、こうしてーー」 「これは私のことなの。あなたは私じゃない」 「だけど僕は君の夫だ。妻の過去を調べる権利はあるはずだ」 「だったら、せめて相談くらいしてくれたっていいじゃない。私は、勝手にされたことが許せないの。私達は、夫婦である前に一人の人間同士なのよ」  確かに、彼女の言っていることは間違ってはいない。しかし、僕はここで止めるわけにはいかない。あの人の、寂しそうな顔が脳裏から支えてくれる。 「いい加減、意地を張るの止めたらどうなんだ?」 「ほっといて」 「いや、できない。お母さんも君も」 「意地を張ってるには、あなたじゃない」 「どういう意味だよ」 「私のことを無断で」 「違う」 「何が違うの?」  千春の目を見ていると、あの人の言葉が蘇った。  いつの間にか、僕は、あの日のことをそのまま話し出していた。
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