素晴らしい悪夢

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その2つの繭は、 完成してから数分と経たないうちに、 まるで春が訪れたかのごとく、 中からこじあけるように開かれた。 本能的に近くにいてはいけない気がして後ずさりするが、 勢いよく開かれた繭からは、 手のひらほどの蛾が無数に飛び出してきた。 辺り一面に金色の粉が舞い散り、 黄金(こがね)のシャワーを浴びているようなほどの鱗粉は、 2つの繭から放たれる蛾によって延々と注がれている。 成す術もなくその黄金色(こがねいろ)の雨を受け、 やっと目が開けられるようになったときには、 辺りには何もなかった。
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