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ソイツが初めて、家にやって来た日のことは、今でもハッキリと覚えている。
母親の腕に抱かれ、安心しきったように眠る、小さな生き物を見上げれば、父親がオレの前で膝をつき、目線を合わせて、こう言った。
「──……この子は、お前の“弟”だよ」
父に促されるように、母も膝をつき、腕の中の“弟”をオレに見せた。すると──
両親の声に従うみたいに、ふっとソイツが目を覚まし、その薄い瞼に隠されていた瞳が、まっすぐ、オレに向けられた。
「……っ」
──なんだ、これは。
思わず、息を飲んだ。
小さな生き物の、その瞳。
漆黒の夜空の中に、緑に光る欠片を散りばめたような──不思議な瞳が、そこにあった。
それは、この世にたった1対だけしか存在しない宝石のように、オレには見えた。
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