魂を吸う写真機

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 写真にまつわる都市伝説は無数にある。最も身近なものは心霊写真だろう。けれど人はやれ光のせいだ、やれ加工だとあまり重く受け止めていない。たとえそれが本物で、危険なシロモノであったとしても……。  写真は人の思い出を写し出すものである以上、感情の入れ方を間違えると、負のエネルギーを生みやすい。その感情が、これまでに幾度となく悲劇を起こしてきた……。  「霧島(きりしま)さん、これなんですけど」  ここは公安庁、特殊災害課。公安庁の中に存在しているが、一般には知られていない。仕事の内容は主に、世間に蔓延(はびこ)魑魅魍魎(ちみもうりょう)を調査・対策することだ。世間から我々の存在を隠す理由はただ一つ。これらの存在が明るみに出るとパニックに陥るからだ。 「本部から出動要請がありました。簡単だからそちらで早急に対処してくれと」  公安庁内部にありながらここは支部だ。本部は都内地下鉄の終点のその先、「きさらぎ」駅にある。彼らはもっと大きな事件に(たずさ)わっていて、我々は前線にいる兵士、あるいは警察組織でいうと交番勤務のようなものか。 「どうもミイラのような死体が各地で発生してるらしいです。確認しただけで6件。それを見た医師たちは原因不明だとみな首を傾げているとか。報告に上がってないものを合わせるとそれなりの数だと思われます」  霧島部長は腕を組み、黙って聞いていた。それから先を促す仕草をした。 「今まで元気だったのに、急にやせ細っていって死んでしまうようです。発症から死亡までは3日から一週間程度とバラつきがあります。被害者遺族が不審に思い、騒ぎ始めているとのことです。こちらが詳しい調査資料です」  部長は一通り目を通すと迅速果断に指揮を始めた。 「分かった。すぐにチームを編成する。竜崎(りゅうざき)、お前も来い」
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