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三歩歩いた先には、道がなかった。
『ロック、ロック! 聞こえる?』
「……ああ、聞こえるよ。大丈夫だ」
いてて、と、したたかに打ち付けた尻を撫でながら立ち上がって周囲を見回す。
おそろしく真っ暗だ。
今回は珍しく縦坑だが、近くにはいつもの石があるはず……。
鼻をつままれてもわからない暗闇の中で、手持ちの小型ライトを灯して石積みの壁を撫でて探る。
じきに「これかな」とつぶやいてわずかに出っぱった壁の一部を押す、と。
ぼっ、と、何かが擦れる音がして、少し離れた場所の壁の浮き彫りが柔い青紫の光を放ち始めた。その光はゆっくりと通路の奥にも広がり始め、誘導灯のようにロックの好奇心を刺激する。
「リリ、遺跡の明かりを確保した」
『これからだね。気をつけて』
「ああ。じゃ、011遺跡の採集を開始する」
今は淡く光る彫刻が施された石から手を離し、ロックは明かりがじょじょに照らす遺跡の奥に目をこらした。
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