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「そんなこと……」
ないって言えなかった。中途半端という言葉が胸に痛い位に刺さったから。
「自分勝手で押し付けがましいし、いつも何かしてやった顔でさ、家にいるとき、まじでイライラする」
「そんなつもりで言ってないよ」
「結局、自分がどう思われてるかしか見えてねーから気づけないんだろ……親父、元気なかったぞ。お前が無理してこっちに帰ってきてるんじゃねーかって、心配かけて悪いなって、母さんに話してたの聞いた」
「そうなんだ。でもそれは、お父さんが心配だから」と言って、口をつぐんだ。むっちんはまだお父さんの病気のことを知らないんだった。変なことは言えない。
「親父の身体が心配とか言いてーのかよ?」と、むっちんは言った。
「むっちん、知ってたの?」
「当たり前だろ。気づかないわけねーだろう。お前、毎週末帰ってくるしさ。なんか変だなって思ったよ。親父から聞いた」
「こんな時期に、言うなんて」と呟いたら、むっちんが、「こんな時期だから、だろ」と言った。
「え?」
「こんな時期だから、聞けて良かったよ。つうか、だからやろうって思えた。それは、ちゃんと向き合ってくれたからだぞ」
むっちんが、呼吸を止めた気がした。それから、ずずっと洟をすすった。
「これ以上、親父に心配かけるんじゃねーぞ」
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