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「むっちん……」
「あと、もう帰ってくんな」
「えっ?」
「じゃあな」と言うから、慌てて「あっ、明日、頑張ってね」と言った。
プープーと音がして、届いたのかわからなかった。
足に力が入らなくて、膝から崩れた。そのまま身体を床に預け、仰ぎ見る。
なんだか、胸の痛みがひどい。
痛くて、痛くて仕方ない。
目を瞑ると、悲しみが胸の中から溢れ出てくる。
味わいたくなくて、すぐに逃げようとするのだけど、次から次へと溢れてくるから、感じるしかなかった。
お父さんとか、谷さんとか、むっちんとか、愛されたいとか、愛されなくて悲しい、愛されたいから我慢しなきゃとか、必要とされたい、受け入れてほしいとか、胸の内側から訴えかけてくる。
扉をドンドンとノックするみたいに強く、強く、ここから出してほしいと訴えかけてくる。
だから、胸が痛いのかもしれない。
ずっとずっと我慢してたのは、こうして痛みや悲しみを感じきることだったのかもしれない。
もう我慢しないでいいのだと、手放していくと、涙が沢山溢れ出てきた。
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