wereabouts of god

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「さっちって、本当に美容師なんだね」 髪の毛にハサミを入れてもらいながら、実感して呟く。 「なんだよ、今更」 「働いてるところ、初めて見るからさ」 「惚れたべ」 「あはははは」 「その笑い、ムカつくな。手滑ってハゲめぐにしたら、ごめんな」 「さっち、どんな切り方したらハゲにできるの」と言うと「プロだからな」とどや顔で言った。 カットもカラーも終わって「髪どうする? 巻いてく?」 「うん。お願い」 髪にコテをあてられると懐かしい気持ちになった。高校生の頃のさっちにこうして巻いてもらったことがあったからだ。 「さっちに昔、髪巻かれると、キャバ嬢の出来上がりって言われてたなぁ」 「ああ、そうだったな。めぐ、老け顔だったからな」 「大人っぽかったって言ってよ」と睨むと「可愛いめぐの出来上がり」とすまして言った。 「さっちって、本当に大人になったね。そんなこと言えるようになっちゃうんだもん」 緩く巻いてくれた髪に触れる。急に込み上げてくるものがあって、「ありがとう」と伝えるのがやっとだった。
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