200人が本棚に入れています
本棚に追加
「さっき、めぐの髪に触れて思い出したけど、あのとき、めぐに出会ってなかったら、俺、美容師になってなかったかもしれないな」
「え?」
「あのとき、めぐがさ、俺が髪いじると喜んでくれて、それがすごい可愛かったんだよなー。そしたらなんか美容師になったほうがいいような気がしてさ。めぐが笑うのが嬉しくて、のせられてなったような気がする」
「そんなの知らないよ」
「言ってねーもん。だから、ある意味、今もめぐと一緒にいるようなものだな。めぐがいなかったら、こうなってなかったし。今、仕事を通して感じられる幸せも味わえてなかったよ。あのときの俺を動かしてくれてありがとな」
清々しく笑うので、頷いた。私の胸の中にも爽やかな風が通るようだった。
「また気が向いたら、髪切りにでも来いよ」
「うん。常連になる。今のさっちになら、ちょっと貢げるよ」
「それもいいな。貢げ、貢げ」
最初のコメントを投稿しよう!