wereabouts of god

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お父さんとリビングのテーブルに向き合った。 片手をフィンガーボールに入れてもらっている間、片手の爪をやすりで整える。 お父さんの手に触れるのはいつぶりだろう。 思い出せなかった。小さい頃は手を繋いで歩いたことも、お父さんの手と自分の手を比べて、大きいと驚いたこともあったのに。 お父さんの手を離したつもりなんてなかったのに、自然と離れている。 でも小さい頃みたいに手が離れて不安になるなんて、もうない。 それ位大きな愛情で、私を育ててくれていたからだとわかった。 だから、今だって、私はその愛の中、呼吸していられるんだと思う。 一人で生きてないんだな。私もお父さんも、周りの人達も。 生きてること自体が愛なんだと気づくと、寂しさってなんだか嘘もののように感じた。
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