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後ろを歩いてる人が、私にぶつかる。
「こんなところで、立ち止まらないでよ」
「ごめんなさい」
だけど、進むことが出来なかった。信号が点滅を始めて、ようやく私は走った。
その人は私が渡り切ったところで、次の信号が青になるのを待っていた。私は、薬局に行くはずだったのに、身体を反転させその場に留まってしまった。
何台も車が目の前を行きかう。横目でもう一度確かめる。ああ、やっぱり彼だと確信した。
「水城さん」
呼びかけると私に顔を向けた。ぺこりと小さなお辞儀をした。控えめな態度も変わっていない。長めの黒い前髪も、筋の通った鼻も、細身の身体も。
私の好きだった、前の家のお隣さんだった。
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