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「そうです。だって、今さらです」
なんの話ですかと言った。彼は、少し考えたみたいに間を開けた。
「戻り道かどうかなんて、実際行ってみなきゃわかりませんよ」
「え?」
「戻り道だと思う道が、急に進むべき道に変わるときだってあると思います。それはその瞬間にあなたが動けるかどうかで変わるだけで。選んだ道が悪いんじゃないです。それを選んだ瞬間のあなたが何を信じているかで変わることだと思いますよ」
「……水城さん」
見つめると、少しだけ口元が微笑んだ気がした。
それから、また信号が青に変わる。
「じゃあ」
「水城さん、身体には気を付けて下さいね。華奢なので心配です。ポキッと折れないで下さいね」
「水谷さんは、あれですね」
「はい?」
「心も身体もお元気で」
「はい」と頷いた。水城さんは少し歩いて振り返ると
「水谷さん、幸せってとてもシンプルなことだと思いますよ」
そう言って、背中を向けた。
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