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雨雲はいつの間にか遠のき、差し込む陽の光を浴びてとても綺麗だった。
私も行こうと振り返ると強い風が吹いて、髪の毛が顔を隠した。
乱れた髪を直して前を見る。
心臓が大きく跳ねた。
どうしてか少し先に谷さんがいたからだ。
別れたときとちっとも変わりのない姿に、動揺を隠せない。
「いた」と彼は言った。
「えっ?」
「いたいたいた」と、こちらに駆け寄ってくるので、ぽかんと見つめるしかなかった。
「行くよ」と、唐突に私の手を引く。
「え?」
だけど、そのまま私も後を追ってしまう。足は自然と進んでしまうのだから。
だって、会いたかった。
幸せって、本当にシンプルだと身をもって今、感じた。
ふと水城さんのことが気になって、彼がいた方を見たのだけど、その姿はどこにもいなかった。
本当に夢の中にいるような気がして、ふわふわとした心持ちになる。
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