tapiocapudding

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その人は、顔を勢いよく上げた。 あまりにも急だったので、きゃっと声が出てしまった。 それに気付いたのか、私に顔を向けた。 「……通い妻?」 「通い妻?」 オウム返ししてしまう。 糸みたいに細かった目が、パッチリ開いた。「マジで?」って言いながら。 困惑した表情だけど、隣の家の男の人じゃないってことと、驚く程整った顔立ちをしてるってことが一目でわかった。 芸能人を間近で見たら、溜め息を吐きながら惚れ惚れしてしまうんだろうなって思うのだけど、そんな感覚が私を襲ったのだ。 彼は手をついて立ち上がったかと思うと、フラフラした足取りで私に向き直った。 「いつから?」 「いつから?」 またもやオウム返しする。 ここに住み始めた時期のことかな。 だけど、見知らぬこの人にそんなこと教えたくない。
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