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退院、シャバの空気を吸う
入院中は誰にも弱った姿を見せたくなかったのでお見舞に来てくれる人をお断りしていた私。
紙おむつはいている姿なんて、恥ずかしいから看護師さん以外の人の記憶になんか残したくなかった。
退院が決まってから色々制約も多かった入院生活から、自宅へ帰ることが出来るんだという喜びの方が大きかった。
同時に、入院前と比べたらだいぶ体の動きが鈍くなっている私なので、大丈夫かな?と心配にもなった。
手厚く看護されて、護られていた環境から、シャバの空気に触れるんだと、ドキドキもした。
入院中、病院の建物の中から、療法士さんに付き合ってもらわないと外に出る事もなく、今外が寒いのか、暑いのかも知らなかった。
それからテレビで話題になっているコロナの事も、あまり関心がなかった。まだ1219年の12月の事だったし、今程病院も世間も神経質になっていなかった。
夫が持ってきてくれた私服に、一日一回入浴の時に換えてもらえる病院のバジャマから着替えると、気が引き締まった。
看護師さんで仲良くしてた人とお別れの挨拶やお礼を言って、退院後の生活で気を付けることを夫と一緒に教えてもらう間、私は、今年のお正月はちゃんとできないな、でも年神様も許してくれるよね、と頭の中で考えていた。
「もう戻ってきたらダメですよ、お元気で!」
いよいよ退院する段になってお世話になった看護師さんが笑って言った。私も笑って、
「気を付けます」
と応えたけれど、心中ホントに戻らないように気を付けなくちゃ、と思った。
そのまま外に出るのかと思いきや、事務手続きや入院費の細かい清算などで、夫と、病院のロビーを行ったり来たりした。
小一時間事務手続きをして、ようやく病院の外へ出て、夫が聞いてきた。
「今日だけ好きなもの喰わしてやるよ。何食べたい?」
いろんなメニューが頭の中をどっと過ったけれど、私はこう応えた。
「○○スーパーの焼きそば弁当!」
良く、シャバの空気は旨い!というけれど、私は心底、同感した。
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