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救急車に乗ること
倒れるでもなく、体の左側がなんとなく動かし辛いだけ、ろれつが回らないけど話せるし、大怪我しているわけでも、不正出血しているわけでもないし…目眩はするけど耳から来るのかもしれないし。
とにかく考えられるから意識はあるし。
こんなで救急車に乗っていいのか?
呼ぶまで迷った。でも怖かった。何でもなかったら、何でもないです、ってあとで笑われてもいいや。
耳性の目眩で寝込んでいた間、夫と、息子たちのやりつけない人の手によるとんちんかんな看護に辟易していた私は、今度何かあったらちゃんと看護してもらえる病院に行こうと決めて居た。
二人いる息子のうち、下の息子につきそってもらって、生まれてはじめて救急車に乗って。
救急隊の人って、どどどと入ってきて患者がどんな格好でも運びだしてしまう。
Tシャツ、ハーフパンツ、ノーブラ、紙おむつを履いた姿で担架に乗せられ。
紙おむつをつけていたのは、目眩でヨロヨロして、トイレに間に合わないことが何度かあったからだ。とても情けなく、悲しいことだった。同じ理由で風呂もしばらく入っていなかった。
息子はことの大きさにパニックになった。
私は初めて見る救急車の中に目をぱちくり。
瀕死ではないのでドラマで見るような処置もされず、 いつ手足が感覚なくなったのか、いつ異常に気が付いたのか尋ねられながら粛々と搬送された。
心底思ったのが、救急車って乗り心地悪いな、ということだった。
何よりスピード重視なのだろう、とてもがたがだゆれた。
付き添ってきてくれた下の息子も同じ感想をもったそうだ。
ただ長くは乗らなかった。あっという間に最寄りの病院へついた。
自家用車で40分かかるところをそんな風だったから、かなりスピード重視でスムーズに運んでもらえたのだと思う。
わらわらと下ろされて、目まぐるしく処置室へ運ばれて、MR検査に回されて、医師から診断を伝えられ、そのまま入院となった。
そんなにひどいのかとやっと青くなった。
とにかく今は高い血糖値と血圧を制御するのが早急と点滴の針を腕に何本も刺され、とても痛かった。
この部屋で入院するけれどまた移動するかも知れないと看護師さんから教えられ、慣れないベッドの上へ落ち着くまでしばらくかかった。
終始私は寝かされた状態でベッドごとあちこち動かされ、方向感覚も何もあったもんじやなかった。
時間ごとに自動で血圧を測る装着を付けられ、心電図を監視するモニターにつながれ、金銭的な説明を理解できないながら受け、家族と今後を話し合うために会わせてもらうまでにも時間がかかった。
質の悪い夢をみているようだった。
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