65人が本棚に入れています
本棚に追加
家族のこと
私の家族構成は成人した息子二人に夫。男家族のなかで、女一人、細かいことに気がまわるのも気づくのも私だけ。
それが私が耳性の目眩で家事一切ができなくなって、二ヶ月。頑張ってくれたけれど、家の中は荒れ放題。猫も二匹飼っているけれど世話が行き届かなくなった。
そこへ、私が救急搬送。脳梗塞。
ここまで来て、事の重大さに、皆不安顔。
数年前、私は色々あって精神科に入院した。とてもエモーショナルな状態で。
そのときのトラウマもあったかもしれない。
未だ精神科にかかっていて、処方されてる薬はどうなる?入院して大丈夫か?心配もあったろう。
前に精神科に入院したときは、精神面のこともあり、夫も暫く静かにしていれば落ち着くだろうと、私を信頼してくれた。
でも、脳梗塞。血圧、血糖値共に異常だといわれ、脳の血管が詰まっていると言われ、いずれなおるだろうと言う確信は夫になく、不安だったらしい。
息子たちも怖がっていた。
家族がそばにいる間は私も笑って話していたが、一人になると心細かった。
自分が妻で母親だということがどう言うことか、自分がどれだけ家族を支えてきたか、つくづく思い知った。
暫く寝たきりだった私一人家族から欠けただけで、家族が不安そうに寄る辺ない様子でいるのを見るにつけ、そうか、私は元気で笑っているだけでいいんだと、驚いたし、深く考えた。
家事ができなくて、家を切り盛り出来なくて、家族の世話が出来ないからと、引け目を感じていた自分に笑えたし、これまでの年月どんなに頑張って家庭を作り上げてきたかをまざまざと感じて、家族が私を必要不可欠な存在と思ってくれていることにとても感謝した。
入院一日目の夜、一人病室にいて、泣いた。
家族から離れて一人で眠るのも二十数年ぶりだし、これから私は本当に回復するんだろうか?と自分のことを心配したとき、今まで家族の心配ばかりしていたので、ようやく安心して自分の心配だけできるんだという、深い安堵のようなものが込み上げてきて、泣けて泣けて仕方なかった。
看護師さんはさすがプロだ。
私が泣いていても、そっとしておいてくれた。何事もないかのように、当たり前の事のように。
家族だったら慌てておろおろしたろう。そして私は家族を安心させるために無理に感情を圧し殺して笑っていたと思う。それは今の弱りきった私には辛い体に悪いことだったろう。
私のやるべき事は、妻や母親という役目からの荷を下ろして、速やかに思い煩わず回復することに専念することだ。
そこに思い至って、闘志が湧いてきた。
泣いてスッキリしたあと、私は心配して様子を見に来てくれた看護師さんと少し話して、ぐっすり眠った。
面白いことに、私が闘志を湧かしてから、家族も落ち着いて見舞いに来るようになった。
まるで私の闘志が伝染したかのように。
最初のコメントを投稿しよう!