得体の知れない荷物は返却したい

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得体の知れない荷物は返却したい

「お届け物で~す!」 休日、のんびりしていると宅配便が来た。 「え?宅配? …誰からだ?」 それなりに大きめな箱だが、何かを注文した覚えはない。 宛名を見ると確かに俺の名前だし、住所もこのアパートで間違いない。 「羽伊栖…、はねいす?さん?」 しかし、送り主の名前に覚えがない。 とりあえず、俺宛の荷物だから開けてもいいよな。 ガタガタガタガタガタガタ…。 突然、箱が動き出した。 「な!なんだ!?」 おいおい、何だこれ?爆弾かっ!? 「ギャー!!」 「うわぁーっ!」 箱を突き破って何かが飛び出た。 「ギャー!ギャー!」 「とっ!鳥!?」 箱から鳥の頭が顔を出した。 生き物を宅配しちゃいけないんじゃなかったか? よく見ると、鳥は鳥でも七面鳥だ。 「しかし、…生きた七面鳥なんてどこで手にいれるんだよ?」 なんとか箱を開けて七面鳥を出してやった。 七面鳥はひとしきり室内を走り回り、疲れたのか隅っこでおとなしくなった。 箱の中に俺宛の手紙が入っていた。 『僕は今、親父と一緒にイタリアに居ます 同梱の七面鳥はクリスマスまで熟成すれば食べ頃になると思います 春になったら日本に戻る予定だから、年賀状はいらないよ 戻ったらまた遊ぼうね!』 「… … …羽伊栖ってヴァイスか!?」 母親が日本人で父親がイタリア人の友人だ。 里帰りするなんて聞いてないぞ。 「…熟成って、生きてる七面鳥をどうしろっていうんだよ? 適当と言うかなんと言うか? そういうところはイタリア人っぽいよなぁ…」 その後、この七面鳥は実家の庭を走り回っている。 end
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