雛祭りには…

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雛祭りには…

「実はひなあられ好きなんだ」 こう言うとみんな首を傾げる。 俺の家は男ばかりの兄弟で雛祭りと言っても何も行われる事はないと思われているからだ。 普通は、そうなのだが…。 「ハッピープリンセスカーニバル!イエ~ッ!」 毎年、親父の掛け声で宴会が始まる。 小さい頃はただ楽しくて良かったが、ある程度の年齢になると何で?と思いだす。 「雛祭りって女の子のお祭りじゃないの?」 小学生の頃、俺はお袋に聞いてみた。 「本当はそうなんだけど…」 お袋は苦笑いで答える。 「お父さんはね、本当は女の子が産まれてきてほしかったのよ だから、妊娠する度に雛祭りを祝っていたの… でもねぇ…」 親父も四人の子供が全部男になるとは思わなかっただろう。 とはいえ、こどもの日でもちゃんとお祝いはしてくれるので、家では毎年二回こどもの日があるようなものだった。 俺達兄弟が思春期や反抗期には友達と遊びに出掛けたりしたが、それでも親父はお袋と二人で細やかながらお祝いしていたらしい。 親父とっては、俺達が男であっても雛祭りが「こどもを思う日」になっているのだろう。 末っ子の俺が成人する頃には、兄弟で話し合い「親孝行になるし、出来るだけ雛祭りには家にいよう」と決めた。 「今年もやるぞ!」 親父からメールが来る。 各々独立しても雛祭りだけは毎年みんなが集まり続けられた。 結婚で義理の娘も出来たし、今では長男の娘がいるから、本当の雛祭りになっている。 end
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