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勝手に動いた事への謝罪を軽く述べてから智景はゆっくりと口を開き語り始めた
葵への痕跡が薄れていく中で智景の言葉に暗く差し掛かった気持ちに少しばかりの光が灯った様なそんな感情に直人は藁にも縋るように智景の声を確りと聞き漏らさないように食いつくように耳を傾ける
「直人さん
今度、一緒に行ってみよう。
“ヘヴンズ・ドア”に───────」
「そこへ行ったとして、葵に何の関係がある?」
思った以上に直人の声が低くいが冷たい感情の色は無い。普段より少し低い落ち着いた声に智景は優しく微笑みながら、直人の横に座る
少し大きめの2人用のソファー
智景は直人の瞳を見つめる
困惑する直人の瞳は一瞬揺らいだ様に見えた智景は息を一呼吸置いてから、理由を簡単に述べるた。
「ここの店に葵さんを見たって人が居て・・・
その人に葵の事を聞ければって思って。
人違いかも知れないし、
何かの手掛かりになるかもって思って」
「何で、そこまでしてくれる?」
直人のその言葉に、智景は考える素振りをした。
だが、智景は笑って何でもないかのように 直人さんが必死になって探してるから、僕は協力したい そんな答えが返ってきたが、直人はテーブルの上に置かれたコップを見てからコップに入ったお茶を喉に流し込む
直人は決意を新たにコップを置くと、横に座る智景を見た直人は智景を自分の腕の中へと寄せ抱きしめて耳元で呟く
「ありがとう」
今の直人にはこれしか言えなかった。
智景が自分に対してどんな好意を持っているのか自惚れではなく、ひしひしと感じる度に直人は自分のいい加減さを、優しい智景を良いように利用していると思う度に自分が情けなくて仕方なかった。
狡い自分に嫌になりそう
「僕は狡いね」
智景はそう言って、直人の背中に腕を回し
「こうやって、偽善的な優しさを出して
優しい直人さんを必死に繋ぎ止めようとしてる·····
本当は、」
その続きは直人には聞こえなかった。
震える智景の声が直人の胸の辺りを濡らしたモノが物語っている
本当は、僕だけを見て欲しい。
そう智景は強く思っていたが、直人に嫌われたくなくて直人に面倒臭いとも思われたくなくて、そう胸に留めて置くつもりが、危うく出るところを寸での所で踏みとどまり
その代わりに涙で直人の胸を濡らす結果になった。
直人の ごめん の言葉は智景の耳には届かずに空気に触れるとすぐ溶けて消えてなくなってしまう·····
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