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「あなたが、駒子さんですね」
私は池田弥次郎の元から退散してすぐ、今は金持ちの商家に嫁いだ駒子に会っていた。
彼女の家のちゃぶ台を挟んで座る。
わたしは、佐竹一郎の名前を出せば彼女が面会を拒否するのではないかと思っていたが、その予想は見事に外れた。
すくなくとも彼女は、池田弥次郎よりは良識的な態度を見せたわけだ。
「事件のことについて、お聞きしたいのですが」
「はい、なんでしょう」
駒子の声は少し震えている。
私はそれがどこからくる恐れなのか断定することは出来なかった。
「何もそんなにむつかしいことではないんですがね。私は父の事件のことを調べているんですが、ちょっと整理したほうがいいだろうと思いましてね。あの日起こった出来事を、こうして表にしてみたわけなんです。あなたには、そこに間違いがあったら、指摘していただくだけで良いですから。」
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