二重殺人

父と私

ここに一枚の写真がある。
中年過ぎのがっしりとした体格をした一人の男性とまだあどけない小さな男の子がうつる写真。
過ぎた年月のせいかセピア色に変色したこの写真には、あぐらをかくようにして座る男性の膝に、何とかおさまった格好になっている子供の姿がうつしだされている。
実はこの子供こそが今この写真を手にしている私であった。
「随分古い写真じゃなあ」
畳の上に膝をつき、熱心に写真に見入っていた私に、この家の主である老婆が語りかけた。
「なんせもう三十年近く前にとられたものじゃろう？・・」
「ねえ、田畑のおばあさん、この写真は」
私は家主の名前を呼んでいった。
「ちょうどこの場所でとられたんだよねえ。ほら、ここに桐箪笥があって、あそこにトラの屏風がかかっているから・・・・」