父と私

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そういうと、ばあさんはちょうどばあさんの真上あたりにかかっている時計を指さした。 なるほど、そこにはがっしりとした木の時計がかかっている。 その細工はかなり凝られたもので、時計に全く詳しくないわたしでも、どうやらそれがなかなかの値打ちものらしいということは分かった。 だが、その時私を驚かせたのは、その時計の価値でもなんでもなくて、ただその「池田のせがれが時計を返してよこした」という事実のみだった。 「い、池田さんが時計をくれたんですか。あの池田さんが?」 田畑のばあさんは、私の同意するように頷いて言った。 「そうじゃよ。わしもびっくりしたがね。なんせ、あんな事件のあとじゃろう?ほれ、あんたのお父さんが、池田家のものを五人も殺してしもうた後のことじゃから。」 「そうですそうです、公式には父が池田の家族五人を惨殺したことになっている・・・・盗み目的でね。で、そんな大騒動の後、よくそこまで気が回りましたねえ、その池田さんという人は。返しに来たのはいつのことだったか、はっきりと覚えていますか?」
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