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あれも実際手を滑らせたのは俺ではなく、一緒にご飯を食べた侑大だった。俺のアパートでゼミ用のレジュメを作っていて、二人で夕飯を作ったのだ。洗い物をしていた時に割れたそれに侑大は何度も謝って、思わず笑ってしまったんだった。百均で買ったのだと再三説明して、それでも翌週に新しい茶碗を買ってきてくれた。
青と水色の市松模様。だから今でも俺の食器は、茶碗の片割れだけが洒落ている。
――使ってないな、最近。
ここで汚れている皿とは違って、いつか綺麗にしたまま昼寝をさせてしまっていることまで思い出した。最近はご飯も炊いていない。忙しいのだから仕方ないと思いながらも、誰も見ていないからとこっそり手を抜くような、若干の罪悪感を感じてしまう。
普通だろ、こんなの。その度に自分に言い聞かせて、生まれた灰色のもやを手で払うのだ。
学生の頃とは違う。毎日友だちと合えるわけでも、あんな風にご飯を食べられるわけでもない。侑大が今頃何をしているのかも、そもそも今日が休みなのかも断言できない。連絡を取っていないから分からないのだ。
取ってもいいけど、でも用なんてない。休みの日に一息ついた時、どうしているかと思ったことはある。けれどすぐに、まあいいかと思ってしまうのだ。身体も頭もだるく感じていると、何を話そうか、考えるそこから力を使う動作になる。今だったら話題にはことかかないが――。
馬鹿らしい。自分の解答に苦笑した。見たはずの宛先が消えた、真っ白な写真が届いた。そんな話を誰が信じるのか。
でも、見たはずなんだ。珍しいとは思ったが嫌だとは思わなかった。空腹に負けて後回しにしてしまったが、ちゃんと持って帰ろうと思ったはずだった。
すぐに見ておけば良かったんだろうか。そうしたら写真も写っていたかもしれない。欲求を満たす順位として正しかったとはいえ、そう思うと後悔しそうになる。自分の感情を無駄にしてしまったような。ぐしゃぐしゃに丸めて道端に放ってしまったような。
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