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 じゃあやっぱり、この手紙と写真がおかしいのか。それともスマホに入っている情報ごと変わっていたりするかもしれない。そんなわけあるか。全力で迷走する思考回路にストップをかける。  これはきっと夢だ。実は寝ころんだ直後に眠りについていて、俺が気づいていないだけ。そうに違いない。馬鹿になった頭でそんなことを考えながら、布団に潜り込んだのが約十時間前。  起きて、もう一度確かめて、事態を正しく把握できた。  何度ひっくり返しても光に透かしても、触ってもこすっても変化は起こらない。SNSでも検索してみたが、同じ写真が届いたというようなものはなかった。  何だよなあ。せっかくの休日に気にかかるものができて、何から何まで釈然としない。別に予定なんてないけど。 「あーもう」  自分で思ったことまで腹立たしくなって、とりあえず朝食と食べようと立ち上がった。腹が減っては何とやら。トイレに言って顔を洗って、衣装ケースから適当な服を引っ張りだす。  お湯を沸かして食パンを解凍して、かろうじて残っていたマヨネーズと卵を乗せてオーブントースターへ。パンがこんがりした頃に薬缶が泣き喚いて、実家から届いたカップスープの素をお椀に入れてお湯を注いだ。  あとで買い物に行こう。一人で黙々と消化しながら、空っぽになってしまった冷蔵庫に今日の予定を立てる。あと掃除と洗濯。  ぷつり。歯を立てた黄身の膜が破れる。しまったと思った時にはもう遅く、少しだけ火が通った液体がどろりと流れ出た。白身を伝ってマヨネーズの土手を越えて、皿にぼてりと黄色が落ちる。  真っ白な表面にできたシミ。よく見たら皿の端もかけていて、いつからなのかは心当たりがなかった。大学で一人暮らしをする時に百均で二つずつ揃えた食器で、ここへ引っ越してくる時に意外と丈夫なんだなと思ったことは覚えている。  あの時から今まで、割ってしまったのは茶碗一つだけだ。
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