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 侑大の字だ。  そうだよなと同意を求めれらた手は、思わずポケットから手紙を引き抜く。反射で動いた身体に頭は苦笑して、視線は自然と下に落ちた。  何で。  そこにははっきりと、文字が書かれていた。音も景色も一瞬遠ざかって、俺と手紙だけの世界になる。しかし直後に聞こえた甲高い子どもの笑い声に、はたと呼吸を思い出した。  恐る恐る、指先で文字をなぞる。  紙の凹凸がわずかに感じられるだけで、文字は姿を消さなかった。瞬きをしても同じ。まるでずっとそこにいたように堂々と、俺の名前と住所を形作っている。左上には切手と消印。裏返すと侑大の名前に住所。  戻った……?  あり得ない。でも現実だ。普段だったら一笑するような現象も、こうして目の前で起こってしまえば受け入れざるを得ない。  写真は。再び封をあけて写真を取り出してみたが、それは変わらず真っ白だった。  ――思い出していないから、だろうか。  可能性に思い当たって鳩尾が重くなった。侑大のことを覚えていなかったわけではない。けれど確かにあの瞬間、初めて封を開けて写真を見ていた時、俺は差出人のことを忘れていた。ポストの前で、見たようで見ていなかったのだ。  視界には入れた。ただしそれはすぐに忘れ去ってしまうほど、どうでもいいことにしてしまうほど、景色の一端として捉えていた。  それを思い出したから文字が見えるようになったのだとしたら、じゃあこの写真も、俺は見たことがあるのだろうか。忘れてしまったのだろうか。  でも、何を。
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