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写真なんて範囲が広すぎて、選択肢を作ることすらままならない。地面に落ちた小石を見つけるような、空に浮かぶ雲の一つを探すような、無謀とも言える捜索だ。無理だろそんなの。
掴みかけた光はすぐに遠ざかる。また吐き出してしまったため息に、スマホの控えめなうなり声が重なった。
『写真届いた? 住所合ってる?』
受信したメッセージに、指先が通話のマークをタップする。ぷつりと音がしたあとにコールが二回
「早っ」
耳元で侑大の声が笑った。
「――ごめん、久しぶり」
「おー久しぶりー。届いた?」
「届いたけど……住所は?」
久しぶりに聞く声は全く変わっていなかった。見られていないとは言えずに、微妙に話題をそらす。
「辰人のお母さんから聞いた。返事くれないからだぞー」
「え」
「やっぱ忘れてる」
前に俺の実家に遊びにきた時、なぜか侑大は母親と連絡先を交換していた。だからそれはいい。そうじゃなくて。慌てて電話をスピーカーにして、メッセージの履歴を見る。
「……ごめん」
「いいって、忙しかったんだろ」
さっき届いたメッセージの上、一か月ほど前。侑大から住所を問う内容が届いていた。その更に一か月ほど前には、近状を問うもの。更にさかのぼると、同じように近状を問うたものに俺の簡素な答え、それへの返信で会話が途切れていた。
何となく覚えがある。あとで返せばいいとそれきり忘れていた。疲れているからと、その時は返信すら面倒に思ったのだ。
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