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「俺は……
君の泣き顔しか見たことがない。
だから、君を笑顔にする手伝いを俺に
させてくれないか?」
なんで?
「あなたには関係ないと思いますけど」
「君に関係なくても、俺にはあるんだ。
お願いだから、3ヶ月!
3ヶ月でいいから、俺と付き合ってみて
くれないか?」
「なんでそんなに私にこだわるんですか?
あなたなら、私なんか相手にしなくても
いくらでも綺麗な女性が寄ってくる
でしょ」
身長160センチの私が見上げるほど背が高い彼は、きっと180センチ前後ある。
今はスーツ姿だから分かりにくいけど、夏に会った時には、Tシャツ姿だったから、筋肉質なのが見て取れた。
顔立ちも整っていて、どこかの俳優とかモデルとか言われても納得してしまう。
おまけに大手食品メーカーの部長さん。
普通に考えて、私なんかにこだわる理由が分からない。
「君は10人の男が寄ってきたら、その中から
相手を選べるのか?」
「そんなわけないでしょう。
私には忘れられない人がいるんです。
だから、ごめんなさい」
あれから1年半が経った。
人は、もう忘れてもいい頃だと言う。
だけど、剛士は、私に手を振って亡くなったんだもん。簡単には忘れられない。
「分かってる。
分かってて言ってるんだ。
必ず、忘れさせてみせる。
いや、忘れなくてもいいから、君に前を
向かせてみせる。
俺が君を支えたいんだ。
騙されたと思って3ヶ月、付き合ってみて
くれないか?」
この人はなんでこんなに必死に訴えてるんだろう。
初夏の海で一度会ったきりの私に……
そう思ったら、つい口走っていた。
「3ヶ月付き合ったら、諦めてくれますか?」
「っ!!
もちろん!! ありがとう!!」
私が自分の失言に気づいたのは、彼が踊り出さんかばかりに喜んでいる笑顔を見た後だった。
この笑顔を見たら、あれは言葉の綾だったとは言えない。
こうして私は、彼、藤谷 和真さんと期間限定でお付き合いすることになった。
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