03 カエルと音楽祭の秘密 1

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 晩ごはんのとき、おとうさんに訊いてみたら、「それはおもしろい見解だなあ」って笑って、答えてくれた。  雨が降る理由には、あったかい空気とつめたい空気が関係しているらしい。  あったかい空気が空にのぼっていくと、上のほうは空気がつめたいから、水になったり固まって氷になって、そうやって、いっぱいあつまったのが雲。  あつまりすぎて重くなると下に落ちてくる。  落ちてくるあいだに、氷はとけて水になっちゃうから、雨になるんだってさ。  冬は寒いから、とけないまま下まできて、雪になるらしい。 「古来、雨乞いには火を焚いて祈ったものだが、それは理にかなっているということだな。世界のどこかでは、いまでもそうやって雨乞いをしているところもあるというぞ」 「ねえ、じゃあ、カエルが鳴いたら雨が降るのは?」 「ツバメが低く飛んだら雨が降るっていうのもあるわよね」  おかあさんがくちを挟んできて、そこからはうそだか本当だかわからないような話ばっかりになって、ぼくのギモンはうやむやになった。  おかあさんがでてくると、いつもこうなんだ。  音楽祭が近いから、音楽の時間だけじゃなくて、ほかの時間でも「かえるのうた」の練習をする。  一学年に三クラスあるわけだから、いつもどこかで「かえるのうた」が聞こえてくることになる。  おかげで、いまは国語の時間だけど、頭のなかには「かえるのうた」が流れている。  と思ったら、校庭でどこかのクラスが歌ってた。  ついに、本番とおなじ状況での練習になったみたいだ。立ったり座ったりしているから、三年生かな。一組か二組、どっちかだ。  ミキモト先生が、「もっと大きな声で!」って怒鳴っている。  先生のほうがよっぽど声が大きい。身体の大きさがぜんぜんちがうのに、むちゃを言わないでほしいと思う。  このミキモト先生っていうのは三年生の担任じゃないんだけど、こういうお祭りみたいなことが好きなのか、音楽祭や運動会のときは目立っているから、名前を知っている先生。筋肉モリモリってかんじの男の先生で、いつもジャージを着てる。  ぼくらのクラスも、このあいだ、ミキモト先生の「大きな声で」をやられたばかりだ。  つくづくめんどうなイベントだなあって思う。  あーもう、いっそ雨でも降らないかなあ。ほら、そうしたらさ、外でなんか歌えなくなるじゃない?  てるてる坊主をさかさに吊るそうかな。  ぼくはちょっとだけ本気で考えている。
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