02 タマさんと神社の秘密 2

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 ニャーオ  高く、猫の声が響きわたった。  大きく聞こえたあと、重なるみたいにつぎつぎに猫の声が聞こえてくる。  一匹だけじゃない、たくさんの猫の声だ。  ニャオニャオ、ニャゴニャゴ。  あのへんな声を消しちゃうぐらい、猫ねこネコねこ猫。  ふと、ぼくの足にふんわりやわらかいものが触れた。目をやると、細長い猫のしっぽ。  茶色い毛と、黒い毛。  二本のしっぽが揺れている。 「……タマさん?」 「まったく、なにやってるんだい」 「タマさん!?」 「ついてきな」  三毛猫のくちから、ニャオウという声が聞こえたかと思えば、なぜか人間の言葉になって頭のなかに響く。  ついてこいと言った猫が前を歩くんだけど、しっぽがふたつあった。  茶色と黒色のしっぽが、ゆらゆら揺れて、交差する。  茶色いしっぽに、黒色がからまっているみたいに見えて、ぼくはつぶやいた。 「トルネードだ」 「急ぎな、長居は無用だよ」 「わ、わかったよ」  立ち止まって振り返った猫の身体には、茶色の三角と黒い丸の模様があった。  あんなに歩きにくいと思っていた地面は、いつのまにか固い土にもどっていた。ちらちらと日射しが落ちてきて、耳には風でそよぐ葉っぱの音も聞こえてくる。  前のほうが明るくなっていて、ぼくはすこしだけスピードをあげて、そこへ足を踏み入れた。  そこは、神社の境内だった。本殿の裏がわの、あまり陽が当たらない場所。  幼稚園のころはかくれんぼをしてあそんでいたけど、小学校にあがってからは、そんなこともなくなって、すっかり忘れていた場所だ。  ニャーと猫の声がして振り返ると、四匹の猫がいた。  ぼくの足下にいたタマさんがニャオンと鳴くと、それを合図にしてどこかへ走っていく。  ぼくは訊いた。 「タマさんって、ボスネコってやつだったの?」 「……言うに事欠いて、まずそれを訊くのかいおまえは」  ニャウニャウとタマさんが鳴くけど、そうはいっても、ぼくだってこまるよ。  タマさんのことについて調べようとは思ったけど、まさかタマさんがこんなに変わった猫だとは思ってなかったんだ。ソウテイガイってやつだよ。  うーむと考えるぼくの前で、タマさんのしっぽが不機嫌そうに揺れる。  それは見慣れた二色のしっぽで、さっき見た、色分けされた二本のしっぽはどこにも見当たらない。 「タマさんのしっぽは、どっちが本物なの?」 「さてね。アタシはアタシで、ここにいるだけだからね」 「すごい、かっこいいね、それ」 「……というか、おまえは驚くってことをしないのかい」 「タマさんもお話できたんだなーって、うれしいほうが大きいし。タマさんはタマさんだから、べつに怖くもないし」  それに、なんとなくだけど、こういうのははじめてじゃない気がするんだ。  ぼくがそう言うと、タマさんは「そうだろうね」と、耳をぺたりと伏せた。 「おまえはケンキだし、無自覚に首をつっこむものだから、見ているこちらがヒヤヒヤするよ」 「けんき?」  見る鬼と書いて、けんきと読むらしい。なんと、タマさんは漢字も知っていた。  鬼っていっても、それは人間じゃないものぜんぶをさしていて、ようするにお化けとかユーレイとか、そういうやつ。  つまりアレだ。霊感があるってことかな?
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