なんで・・・(宮野先生目線)

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コンコンコン。 「失礼します、1年3組の滝田、です。」 待つこと数十分。震えた声でそういいながら、こずえが準備室に入ってきた。 きっと、泣き張らしたのだろう。その目は、真っ赤だ。 「・・・・・こずえ。」 心配そうな声が出て。次の瞬間、後悔した。 「・・・あはは。心配かけてごめんなさい。」 だってこずえが、そんな私をみてごまかすように笑ったから。思わず、眉を潜めてしまう。 「・・・・こずえ。」 ・・・なんで。なんで、そうやって、無理して笑うの。 なんで、そうやって、自分を傷つけるの・・・? 「・・・ごめ」 「ばか。」 曖昧な笑みを浮かべながら私に近づいたこずえを抱きしめて、普段なら絶対に言わないような言葉を漏らす。 「・・・・ば、」 だって、こずえが。こうやって、誰かのために。ううん。私のために、自分を傷つけて笑うから。 「ばかだよ、こずえは。そうやって、人のために辛い時でも笑って。ほんと、ばかだよ。」 それは、優しさだ。だけど、それはこずえのことを絶対に苦しめる。 「・・・心配した。心配したよ。高場先生から連絡もらって、状況も分からなくて。でも、こずえが泣きそうになってるって、泣いてるって聞いて。 私は、知ってるから。こずえは、辛い時でもいつでも人を気遣って笑うこと。無理しちゃうこと。知ってるから。 でも、近くにいないと、私は何もしてあげれなくて。・・すごい、不甲斐なくて。」 思わず涙がこぼれたのは、悔しかったから。私がこずえにしてあげれることが、少なすぎて。 私にできるのは、そっと寄り添ってあげることだけで。近くに、隣にいないと、なにも出来なくて。 そんな自分が情けなくて、すごくすごく、悔しかったから。 「でもこずえ、帰ってきた瞬間笑うから。きっと、私のことも気遣ってさ。」 それなのにこずえは、私のことを気遣って無理に笑って。 「宮野、先生?」 「だから、こずえはばかだよ。泣きたい時にそうやって無理したら、いつか潰れちゃう。」 ・・私はこずえに、傷ついてほしくない。こんなに優しくて。こんなに真っ直ぐで。 そんなこずえのこと、たとえこずえ自身であっても、傷つけてほしくない。 ちゃんと、しっかり、伝えないと。 泣きたいときは、泣いていいんだよって。我慢しなくていいんだよって。
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