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辺りはすっかり暗くなっていて、私達はいつものように楽しい話をしながら駅に向かって歩いていた。
歩道の左側を歩いていた私たちは途中の交差点で信号待ちをして、信号が青に変わって私たちが歩き出すと、右側後方から車が左折しようとしていることに気が付いた。
その車は止まる気配がないと感じた私は、とっさに裕太の体を思い切り前に突き飛ばした。
次の瞬間私の体に衝撃が走り、跳ね飛ばされてアスファルトにたたきつけられて気が付くと目の前に星が輝いていた。
そのうち私の意識は薄れていって、目の前に白い霧のようなもやがかかり、気を失ったのかその後のことは覚えていない。
どのくらい眠ったのか私が気付いて瞼を開けると、白い天井が見えてきた。
少しすると周りの様子も見えてきて、私は誰かに声をかけられた。
「明音、明音…」
その声が少しずつはっきり聞こえてきて母の声だと気が付いて少し横を見ると、父と母が心配そうに私の様子を伺っているようだった。
「明音、大丈夫?」
母から声をかけられていることはわかっているが、体は思うように動かず言葉をしゃべることもできなかった。
私は交通事故に遭って病院に搬送され、そのまま入院することになった。
入院中裕太がお見舞いに来てくれて、
「明音、ごめんね!
僕のことを助けてくれて、本当にありがとう!
明音は命の恩人だよ!」
と私に感謝の気持ちを伝えてくれた。
裕太はその後も病院にお見舞いに来てくれて、学校でのことをいろいろ話してくれて、退屈な私の気持ちを紛らわせてくれた。
入院して体が動かせるようになると私は病院内を車椅子で移動できるようになった。
2ヶ月ほど入院したが私は車椅子の生活で、退院後は母に付き添ってもらい車椅子で高校に通いながらリハビリテーションセンターに通った。
半年ほどのリハビリを行い何とか松葉づえで歩けるようにはなったが、脊髄を損傷している私は普通に歩いたり走ったりすることはできないため、女子ソフトボール部は退部した。
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