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高校2年生になってから何も部活をしていない自分が何となく物足りなくて、文科系でもいいからまた何か部活がしたいと考えるようになった。
そんな時、裕太から声をかけられた。
「明音、野球部に入らないか?」
野球は男子のスポーツなのに何故私を野球部に誘うのか疑問に思ったが、裕太が私を誘ったのは野球部のマネージャーをしてほしいということのようだった。
この頃の私は何とか杖1本で歩けるようになっていて、裕太は野球部のマネーシャーだったら私でもできると考えてのことだった。
私は少し悩んだが、自分自身でプレイできなくても好きな野球に携わることができるのは幸せなことだと考えるようになり、裕太の誘いを受けることにした。
野球部に入部すると、野球部の男子がとても歓迎してくれた。
この高校の野球部には過去にマネージャーがいたことはなく、私はマネージャーとして何をしたらいいのかわからなかったが、そこは裕太が野球部員皆から意見を聞いてくれた。
野球部マネージャーの私が主にやることは、練習スケジュールの管理と実行、野球道具や備品の管理と練習時の準備、練習試合のスコアー作成となった。
これ以外の仕事は私自信が考えて、野球部員のタオルを洗濯したり、部室の掃除などもするようにした。
野球部員の皆はとても明るくて元気で、私も野球部の活動はとても楽しい時間になった。
夏の大会が終わって3年生が引退すると、裕太が野球部のキャプテンになった。
裕太はピッチャーで部員の人数が少ないため、同じ学年に控え投手がいなかった。
2年生の投手がいたが、まだ実戦経験が少なくて試合を任せることは難しい状況だった。
3年生になって部員の皆は甲子園に行くことを目標に、さらなる練習に励んでいた。
私も少しでも力になれるように、部員皆の身の回りの世話や部の雑用をこなす毎日だった。
この頃の私は、野球部の男子の練習に付き添うのは体力的にそれなりに大変だったが、充実した毎日を過ごしていて幸せだった。
夏の全国高等学校野球選手権大会の県大会が始まるとき、練習後のチームミーティングで裕太が皆に甲子園に行こうと気合を入れていた。
ミーティングが終わって裕太が私に話しかけてきた。
「明音、お前を甲子園に連れていくよ!」
その言葉を聞いていた他の野球部員たちが、
「そうだよ、明音を甲子園に連れていこう!」
と言ってくれた。
私はとても嬉しくて、こらえきれずに目から涙が溢れて出てしまった。
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