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県大会が始まると世間の予想を覆して我が野球部は順調に勝ち進んでいき、とうとう決勝まで駒を進めていた。
ピッチャーは裕太で1回戦から1人で投げ続けていて、準決勝の頃には疲れがピークに達しているようだった。
決勝戦当日、裕太の肩は限界を迎えているようだった。
それでも裕太は自分自身に気合を入れて、先発ピッチャーとして決勝戦のマウンドに立っていた。
試合は投手戦の様相で両チームとも得点が入らず、0対0のまま9回に突入していた。
我が校は先攻で9回表に皆の必死の攻撃で、相手投手から何とか1点をもぎ取っていた。
9回裏、裕太の肩は限界を超えていたが、それでも裕太は必死にマウンド上で投げ続けていた。
1人目のバッターを内野ゴロで打ち取ったが、2人目のバッターにレフト前ヒットを打たれてしまいランナー1塁となってしまった。
3人目のバッターは、浅いライトフライで打ち取って、4人目のバッターを迎えていた。
このバッターを打ち取れば、我が校初の甲子園出場となる大事な場面を迎えていた。
裕太は慎重にキャッチャーとサインの交換をし、1塁ランナーを警戒しながら投げ込んだ。
2ストライク1ボールとバッターを追い込んだ時、裕太はあと1球で決着をつけようと考えて外角低めにボールを投げ込んだ。
しかしこのボールは制球が定まらず、ボールが高めに浮いてしまった。
このボールをバッターは見逃さず思い切り振り抜いてきた瞬間、金属バットの快音とともに打球はライト方向にぐんぐんと伸びていき観客席にのみ込まれていった。
裕太はがっくりと肩を落とし、マウンド上に膝をついて泣き崩れてしまった。
我が校が決勝戦で負けた瞬間の出来事だった。
最後の挨拶をするために他の部員2人が裕太の両脇を抱えて整列し、最後の挨拶を交わして試合は終わった。
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