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という訳で、その晩、小太郎は寝静まった老母をそっと背負って冠着山の山奥まで登って行き、ゴミみたいに捨ててしもうた。
その帰り、満月が異様に光る下で、「うぎゃー!」という老母の悲鳴が大音量で轟いて来たものじゃから小太郎は身の毛がよだちぞっとして恐怖心を吐き出すように、「ひえ~!」と叫びながら慌てふためいて老人の所へ駆けつけた。
そこで小太郎は約束通り老人から一万両をもらい受けると、一転、心強くなって、うはうはもので大八車を引いて行った。
それから1ヶ月も経たない或る晩のこと、小太郎は大金で建てた御殿の閨房で新たに娶った妻と寝ておると、急に息苦しくなって寝床を這い出て、のたうち回り、苦しい苦しいと悶え苦しんだ揚げ句、只々おびえる妻を残して泡を吹きながら死んでしもうた。
小太郎は冠着山で狼に食い殺された老母の怨霊に取り殺されたのじゃった。こうなることを予知していた老人は、怨念を晴らし只の霊魂になった老母の魂と小太郎の魂をほくほく顔で掻っ攫って行った。つまる所、老人は死神の化身じゃったのじゃ。
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