冠着山

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「わしを誰じゃと心得ておる。」と老人は落ち着き払って言った。「わしゃ人呼んで月夜見尊(つきよみのみこと)、即ち神じゃぞ!」 「か、神?たわけたことを抜かしよって何をほざくか!この気違いの乞食め!」 「気違い?それも乞食じゃと?乞食がこんなことが出来るか!」  老人はそう言うなり杖を真上に放り投げると、杖がなんと鳩に変身して玉響、上空を飛んでから舞い降りて来て老人の肩に留まった。  当然の如く魂消た小太郎は、立ちどころに平伏した。 「こ、これはこれは神様であらせられましたか、まさか神様がこんなところをお歩きになるとは思いも寄りませんでしたので失礼千万な失言を吐いてしまいまして誠に申し訳ございません。ご無礼をお許しくださいませ!」 「まあ、よい、面を上げよ。」 「ははあ!」小太郎はすっかり恐れ入って面を上げた。
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