『I'm lover』

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 ――ごめん……びっくりしたよね。  アイは。無理やり笑顔をつくろう彼女の()は。落輝(ゆうひ)を背負った輪郭のように淡い。  応えようと思って声がでない。なにか言わなくちゃと思うのに反面、鳴き方を忘れた雛鳥のように息が掠れるだけだ。呆然と彼方に消えるその背中をいつまでも見続ける。  なぞるように指を侍らせる。ほんのりと残る、湿り気と体温。  戸惑いも困惑もすべて置き去りにして、熱だけが残った。
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