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見てもらえばわかることだが、私は相当な美人だ。こんなことを言うと、自己中のバカ女だと思われるかもしれないが、性格もいいし、知的でモラリスト、それなりに優秀な人間である。
そして、この物語は、私が美しく、非の打ち所のないパーフェクトな女性であることが前提であり、そうでなければなりたたない。
だから、敢えて言う、私は相当な美人であると。
職場が転属、もちろん栄転だが、その初日、ターゲットを見つけた。
30代前半、身長178cm、体重推定68kg、顔はまずまずのハンサム。親切で誰にでも優しい。ゴルフはしたこともなく、サッカー、野球、ラグビーには無関心。テニスと水泳、ジムで鍛えたスリムな体。酒はワインを少しだけ。知的で教養があり、芸術家でピアニスト、英語とフランス語を話す。学歴、家柄は申し分なく、出世コース、実家は庭付き一軒家、しかも次男坊。
完璧だ。
私は清楚に奥ゆかしく振る舞い、髪をポニーテールにした。そして、昼休みに髪を解く。
ターゲットは3秒で落ちた。
取り巻く88人のライバルを、彼の眼中から排除するのは、私には造作のないことだった。
しばらくして、私たちは結婚した。
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