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 そんな夢のようなある日のこと、リビングを飾るシャンデリアを探しに行ったとき、ふとペットショップに立ち寄った。ふたりとも犬が好きだったから、ほんのちょっと覗いてみるつもりで。  一匹の仔犬が透明なアクリルのケージにおすわりをしていた。仔犬は彼をじっと見つめていた。彼がケージに近付くとトコトコと歩いて、しっぽを振った。彼の目は仔犬に釘付けだった。あんな目で他の誰かを見つめる彼を見たのは、初めてだった。あの目は、私だけのものだったはずなのに。  頼みもしないのに、店員がやってきてケージから仔犬を抱き上げ、彼に渡そうとした。私は止めようとしたが、遅かった。仔犬は彼に抱かれ、嬉しそうにしっぽを振り、彼のほっぺたをペロペロと舐めた。  仔犬を抱っこしたら、もう決まりだ。私にはなす(すべ)がなかった。  再び彼は3秒で落ちた。
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