プロローグ続 ~ランキング鑑定組織~

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プロローグ続 ~ランキング鑑定組織~

   さて、僕の名前は、ミギト・イズウミ(未擬斗・伊豆海)、この世界では通称、『ジン・アクター』と呼ばれている。  どんなヒトや生き物にも、僕自身の身体を本当にスガタカタチごと変えなりきり、演じ切ることができる。 心の奥底からそのものになりきるように演じることによって身体も変化させることができるようになったんだ。  さっきの兵士に化けていたり、特殊デンキウナギになり切ってみせたのはこの能力「トビウオニギタイ」と呼んでいる特殊能力なんだ。   こういった特殊能力のことを裏の世界では、Ability Beyond Chakra(チャクラの向こう側の能力)、通称ABCとかビヨンドとか言われ、 能力者のことを『ABCアルファベット』とか、『ビヨンド使い』とか呼んでいる。  世界中に目覚めたものがどれだけ潜んでいるかはわからないが、少なくともヒトに個性があるように、全く同じビヨンドは存在しない。 クローン人間だって環境によって精神・人格が違ってくるものだ。  つまり意図的だろうが偶然だろうが、同じビヨンドは存在しないし、できる可能性はないということだ。  なぜ、僕がこの能力に目覚めたのかは後ほど語るとして、まずは、僕らのチームや組織について説明しよう。  そして、僕たちのチームは全部で今のところ僕・ミギトをあわせて5人だ。 その僕たちのチームが所属する組織があるんだけど・・・  この組織の名は全てを記録する者たち『アカシックレコーズ』という。この世のあらゆることを調査・鑑定し、全世界の人々の白日のもとに晒す。 その結果、どういう判断が世間で下されるかは、表の世界で自然発生的に為されることになり、我々は通常、直接手を下すことはない。  なぜなら、我々は神ではないからだ。神に変わって裁くことなんてないんだ。 だが、どうしてもビヨンド使いによって引き起こされた事件や、巨大組織によって闇に葬られてしまうものに限っては、表の世界で明るみに出ることがない。  そういった特殊ケースを処理する組織の部隊が、執行人と呼ばれる彼ら自身で直接、裁きを与える権限を与えられたものであり、全部で組織内に7人いて、その一人がマモン・・・様ってわけなんだ。 マモン様は、「強欲のマモン」と呼ばれている凄腕のビヨンド使いだ。  世界秩序に逆らう『七人の大罪人』と言われている。そのうちの『強欲の罪人』というわけだ。  ところで、マモン様・・・おっと任務を離れて一般の民に戻ったときは、ゴーダ様だったな・・・その彼、ゴーダッタ・ケッシー様の下にいる僕含めた四人のメンバーがさっきの四人ってわけさ。  僕を助けに来た全身黒タイツの元気いっぱいの巨乳でスタイル抜群の女の子(?)(僕は年齢は聞いていない)は、通称『ドリーム・ウィッチ』とか『夢見の魔女』とか言われている。 本名は、アカリン・サン、自分のイメージした幻影を相手に見せることができるビヨンド使いで、身長は僕より少し低いくらいで、僕が179cmだから、まあ女の子では高いほうなのかな。  顔はまあ・・・目がくりっとして、可愛いほうかな、髪型はまあ長すぎずまとめてるって感じかな。ポニテかほどいてるかだな、だいたい。 そして、僕の見立てでは、かなりのきょぬーだと・・・  「こらーーーーーーーーーーーっ!! ヒトの胸を勝手に想像するなし!!」  ガツン!!  「痛って!!」  「つか、お前、帰ったんじゃなかったのかよ?」  「そして、僕の心の中の声に勝手に入ってこないでくれる?」  「なにかよからぬ想像してるって予感がしたのよ!」  「それに、一緒に帰ろうかと思って・・・」  なんだよ・・・ただのツンデレかよ。   「ちょっと・・・外で待ってるよ、ジャックもサーシャも・・・」  ま、そうだよな・・・w  僕たちが先行潜入し、後からあとの二人、ジャック・ジャンモードとサーシャ・チャ・ゴジョウ(五條)がデータ収集・破壊を担当していたってわけさ。  ジャックは人狼に変身することができるビヨンド使いで、通称『シルバー・ウルフ』または『銀狼』。 身長は190cmを越え、顔はまぁ僕が言うのも何なんだがイケメン、スタイルはまさにモデルで、キザな感じだが決して嫌味はない。なかなか男気があるすっげぇいいヤツだな。  サーシャは水を操り水に情報を記憶したりもできるスペシャリストで、通称「カッパ」いや、うそ・・・『沙悟浄』とか『沙和尚』と呼ばれている。 彼女は身長は150cmくらいのちびっこで、貧乳、幼女体型だけど、性格はおっとりのんびりで優しい、ゆるキャラのような存在だな。  ま、ゴーダ様は、人外レベルで、仲間の僕たちでさえホントその能力の一片さえ見たことがない。 ゴーダ様は、一言でいうとあれだ、オレ様キャラってところだ。それも徹底しての・・・。    ちなみに僕が自分の身体をほかのモノに変化させたとき、僕の着ている組織特性の特殊スーツが僕の精神イメージを感知し、どんな服装や装備にだって変化できるんだ。 だから、僕は自分のビヨンドを使っても、毎回、マッパになったりしないってわけさ。 ・・・女の子たちを期待させちゃったかな?(笑)  ガツン!!  「だから、痛いって!」  「なんか調子乗ってる気がしたのよ。」  また、アカリンがまるで長年コンビを組んできた漫才コンビのツッコミのような鋭さで、僕の頭を叩いた。  しかも、けっこう痛い・・・くぅ・・・。"  魔女かよ、ホントの・・・心が読めるとかないだろうな、こいつ。  またスーツは作りこみ要素だって半端じゃないレベルである。別装着となっているオプションツールを使うことで、 武器・防具の外見、自分の外装から、自らが保有する道具の詳細な設定を変化させることができるのだ。  例えばドラゴンをイメージしたとしよう。自分の身体はドラゴンのような鱗に覆われ、大きさだって細胞自体を変化(演技)させ、大きく化けることもできる、だが普通の服では破れてしまうし、兵士に化けたのに軍服じゃなくて普段着だったりしたらいくら本物そっくりになりきっても即バレちゃうだろ?w  そこで組織が開発したのが、この特殊スーツでこれは僕の精神エネルギーと呼応して変化させることができる伸縮自在のスーツなんだ。 普段は普通の服と変わらない。さらに、オプションのスマホがこの特殊スーツと同じ機能を持っている特殊スマホなんだ。兵士の持っていた銃に変化していたのがこのスマホってわけさ。  ま、長々と説明ばっかり、申し訳ない。  ・・・さて、帰ろうっと。  今、僕がいるのがマモンチームの隠れ宿的なバー『シティ・ハンター・ハンター』だ。ネオトウキョウエリアのロッポンギに位置する。 で、バーのマスターは、オーシャン・ボーズっていう人で組織とのパイプ役でもある。  僕らは、マスター・ボーズって呼んでいる。  で、仕事終わりに軽くいっぱい飲んでいた僕らは、そろそろ帰ろうかという話になっていたところだった。  「マスター!勘定はツケで(ニコリ)」  マスター・ボーズは、  「Exactlyイグザクトリィィ」  とだけ答えて、こちらをチラリとも見ない。  ・・・うーん、このヒトもホント謎の人なんだよなぁ・・・  バーの扉を開け、外に出た僕は、待っていた3人に声をかけた。  「待たせてごめんね」  アカリンが即座にツッコんできた。  「ホント、遅いっつーの!」  ジャックがそれにさらに輪をかけてツッコんできた。  「我らがボス・ゴーダ様風に言わせると、ミギトのくせに生意気だぞ!・・・だな」  サーシャは優しく言ってくれる。  「そんなに待ってないから、大丈夫だよ。ミギトくん。」  四人はそれぞれ歩きながら、途中途中で一人また一人と別れて、最後にアカリンが別れ際に、  「じゃーね、ミギトくん!」  僕がアカリンにマンションの前まで送るよって言ったら、  「バーカ、そのまま送り狼にでもなろうッて言うの?www  あ!狼はジャックだったわw」  そう言って彼女はくるりと振り返って去っていった。  まぁ、彼女もビヨンド使いなので心配することもないのは本当なんだけどね。    僕はアカリンが見えなくなるまで見送った後、帰路についた。  でも、ちょっとだけ、アカリンを送ることができなかったことを残念に思っている僕がいた・・・  その数日後、超巨大軍需企業ワルイヤトゥーラの組織的人体実験が謎の組織アカシックレコーズから、世界の電脳世界にリークされ、白日のもとにさらされた。  当然にして、その企業は優良企業ランキングが大暴落し、悪徳企業ランキングのトップに躍り出てしまった。 そして、その情報がどこから誰の手によってもたらされたか、鉄壁のセキュリティとサーチ追跡能力を持つという超人工頭脳A・I.にても、どこからリークされたか追跡不可だった。  優良企業ランキングTOP5に入る超大手軍需産業複合体の一角・ワルイヤトゥーラがその非人道的人体実験研究などのデータを破壊されたという報告とともに、大幅に順位を下げ、100位圏外へ落ちた。  各世界エリア自治体は、もはやこのワルイヤトゥーラに軍事に関する情報を渡すことも、発注することもないだろう。 ま、そうなるべくして、その後、ワルイヤトゥーラの主だった人物は全員失脚し、企業は破綻してしまった。  まさに、ランキングが世界の軍事バランスも変えてしまうという結果だ。 まぁ、あの企業が人体実験をしているのではないかという噂は、前々からあったんだけど、なかなかしっぽを掴ませなかったのだ。  この世界は、このランキング鑑定集団のもたらすランキング評点によって、軌道修正されるということは、もはや常識となりつつあった。  僕がビヨンドに目覚め、この組織に入ったのは2年前、僕は表の世界では普通に俳優をしている。 ただし、この僕の今の顔形ではなく、ヒョウリという幼馴染の姿で、ヒョウリ・イズウミ(漂莉・伊豆海)の名前でだ。  そして・・・一緒の孤児院で生まれ育ったまさに兄弟のような幼馴染のヒョウリはすでにこの世にはいない。 僕はヒョウリと同じ夢を持って、二人ともに役者を目指し、世界の俳優王(俳優ランキング1位)を目指していたんだ・・・  そう・・・2年前のあの事件が起きるまでは・・・  あの事件がもとで、僕はこの組織の存在を知り、さらにマモン様・・・じゃなくってゴーダ様のチームに入ることとなったんだ。    このなにかに化けるという『トビウオニギタイ』という特殊能力の目覚めとともに・・・ ~続く~
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