第24話 復讐編 『リーヴァイス班長』

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第24話 復讐編 『リーヴァイス班長』

 翌日――。  僕はまた、ヒョウリに成り切って、舞台稽古に向かった。  ハーンズさんが、また出迎えてくれた。  「んんーヒョウリ・・・。なんだかちょっと男っぽくなった?」  「え?そ、そうですか?変わらないと想いますけどねぇ」  ハーンズさんって妙にするどいよな。  舞台稽古場に向かう前に、控室へ行こうと思ったら、ドアの前にリーヴァイス班長が立っていた。  「よお! ヒョウリ、ちょっと顔貸せ。」  「は!」  と、勢いよく答えたのは良いんだけど、何の用だろう? 演技のことで何かあったかな。  用具室のドアを開け、リーヴァイス班長が入るように促す。  僕は何の気もなくついて入った。  おもむろに、リーヴァイス班長は振り返った。  「おい、てめえ・・・。何か悩んでいるなら、このオレに相談してみろ。」  「え?」  「てめえの集中力が散漫なのはわかるんだよ、なぜか・・・な。オレは昔から人の生命力のようなものが感じられるんだ。 てめえは、ここずっと不安定だ・・・。まあ、あんな事件があったのだから、わかるんだが、それ以外にもあるだろ?」  「リーヴァイス班長・・・」  す、するどいな、もしかしたら、リーヴァイス班長もチャクラを感じ取れるのかもしれないな。たしか、こういうなにかに熱中するタイプは発現しやすいって言ってたしな。    「ん・・・こればっかりは、いくら班長でも相談できません。これは僕の・・・僕自身が乗り越えなければいけない問題なんです!」  さすがに、リーヴァイス班長を巻き込むわけにはいかない。  「ふん、勝手にしやがれ。だが、いいか、てめえが生きるも死ぬも勝手だが、演技に心臓を捧げるくらいの気持ちでやってみろ。他の問題は・・・好きにしろ!」  「わかりました!班長!」    ふぅ・・・相変わらず、怖い人だ・・・だが、リーヴァイス班長は、僕を気遣ってくれたんだろう。その気持だけで十分だ。  僕は控室に戻った。  まぁいつもの面々がそこにいて、僕はほっとした気分だった。  コニーシ、アルミーナ、マルコス、あ、今日はミカもいたか。  そして、サーシャ・・・。なんだか目を合わせにくいなぁ・・・なんて思っていたら。  「おお!ヒョウリなのらー。元気ないのね~。さっき、リーヴァイス班長に怒られでもしたのかなぁ?(にっこり)」  満面の笑みで、いつもどおりのサーシャに僕は感謝した。  「な・・・何いってんだよ、そりゃ、班長に呼ばれたけど、心配してくれただけだよ」  「そっかぁ、ならよかったのらー。」  「ん・・・ヒョウリ、今日はなんだか気合が入ってる・・・。」  ミカがそう言ってきた。  「わかるか?うん、なんだか掴んだ気がするんだ。」  「さて、稽古だ!」  僕は、昨日見た、雄々しいライオンの姿をイメージし、心をライオンのものになり切ってみせた。  「がおぉおおおお!!!!」  大気が震えるような叫び声、まるでその場に野生の猛獣がいるかのような、圧倒的な迫力!  本物と見間違うかのような野生の迫力が出て、エルヴィス団長やリーヴァイス班長も、驚くほどの絶賛をしてくれた。  「ヒョウリ!見違えるような演技だ。さすがは、私が見込んだだけはある。役を・・・つかんだな。」  「ふん!てめえにしては上出来だ・・・。ほめてやる!」    尊敬しているエルヴィス団長とリーヴァイス班長に褒められて、すごく嬉しく感じた。  ミカが寄ってきた。  「ヒョウリ、さすが。」  「お、おお!これくらい、まあ、いわゆる昼飯前ってやつだ!」  「それ、朝飯前・・・。」  「いいんだよ、わかるだろ、なんつーかよ。感覚で。」  「ふーん。ま、いいけど。」  ミカってホント、なぜかよくわからんのよな。  「ヒョウリ、やはり、すごいのら!今の本物のライオンみたいに迫力があったのら!」  サーシャもそう言ってくれた。  「けっ。オレも負けねーぞ。ヒョウリ。」  コニーシは相変わらず向上心が高い。  「うん、すごくよかったよ、ほんと。」  アルミーナは素直に褒めてくれる。  「僕も、そう思うよ。」  控えめにマルコスが言う。  その後、6時間みっちり稽古があり、いよいよ明日一日休みで空けたら、来週最終稽古で、公演が始まる。  「いやー今日も疲れたな。」  「今日は何か食べていくか?ヒョウリ?」  「いや、コニーシ、今日はセイラに会う約束してるんだ、だから今日は、ごめん。」  「おっと、そうか、セイラちゃん、元気出ると良いな。」  「うん、ありがと。」  その後、なんとなく、みんな、別れ別れに帰っていったが、僕、サーシャは二人一緒に歩いていた。  すると、何か、殺気のようなものを背後から感じた!  (敵か!!)  僕は、チャクラを込め、後ろを振り返った・・・が、また!  「や・・・やわらかい!!」  ばいーーーんってナニカにぶつかった!  「こ、こ、この、感触は!アカリン!」  「こ、こ、こら!人を胸の感触で確認するな! ・・・って、まず手を胸から離せーーーー!」  「ご、ご、ごめーーーん。・・・って、毎回なんで僕を驚かせようとするのさ!?」  「いや、だって、面白いんだもん、ヒョ・・・ミギ・・・えと。」  「ヒョウリ!で、いいよ。今はそうなんだから。」  「むむむむーーー、アカリンとミギ・・・ヒョウリってなんだか怪しくないかなのら!? なんだか、いちゃこらしてるようにしか見えないのら!私も混ぜるのだーーー!」  って、なぜか、妙にぺったんこの胸を僕に押し付けてくるサーシャ・・・。  いや、君ってけっこういいとこのお嬢様、じゃなかったっけ!?  「って、そんなことで張り合うなよーーー!」  「そ、そうだね、早く、セイラちゃんに会いに行こう。遅くなっちゃうよ。」  アカリンがちょっとその場を取り繕うように早口で言った。    レスラー道場『獅子の穴』の門のところまで歩いて行った僕らだったが、門のところに二人のビシッとした黒のスーツ姿のかっこいい感じの女性が二人立っていた。  「君たち、ヒョウリ・イズウミ君と、アカリン・サンさん・・・ですね?」  そう言いながら、彼女たちは警察電子証をスーツの内側から出して、ホログラムでフェイス認証を提示した。  警察が・・・今頃・・・いったい、何の用があるというのだろうか・・・。  僕は少し不安に感じていた・・・。 ~続く~
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