第3話 孤児院消失事件 『黒炎に包まれしもの』

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第3話 孤児院消失事件 『黒炎に包まれしもの』

   僕とガストーンが孤児院にたどり着いた時、建物の1階部分から火の手が上がり、その勢いが2階にまで達しようとしていた。 炎の勢いは凄まじく、黒煙を上げながら、夜空を煌々と照らしていた。  「キャシー先生ぇ!!みんなぁ!!ヒョウリぃ!!」    みんながどこか逃げ隠れていることに一途の希望を託し、僕は力いっぱい叫んだ! その声は、今までのどんな舞台上でも出したことがないようなよく澄み渡る声で、孤児院内に響いた。  ガストーンは孤児院の広場や、倉庫など探していたが、すぐに僕の下へ戻ってきた。    その時――。      ガシャァ―――――――ン!!  もの凄いつんざくようなガラスの割れた音とともに、2階部分の子どもたちの寝室の一つの窓から、黒い物体が飛び出してきた。    それは明らかに人の姿をしていて、なにか小さな子ども・・・パジャマ姿のように見えた・・・を抱えて窓から飛び出してきたのだった。  人の姿と言ったのは、それが血と焼けた炎によって黒くなっていて、誰だか一瞬わからなかったからだ。  それが地面に落ちて、唸り声を上げて、、、  「うぅ・・・ぅ・・・」    僕とガストーンはそれがヒョウリの声だと気がついた。  落ちる際にヒョウリは、抱えていた子どもをかばって自ら地面に叩きつけられた。 ヒョウリは脇腹をえぐられ、出血している様子であった。  さらに、窓を突き破った際に切ったであろう箇所から血を流し、やけども重症のようだった。      そしてちょうど彼らが飛び出してきた部屋から、もの凄い黒炎がまるで龍のように彼らに襲いかかった。  しかし、それに呼応するようにヒョウリの身体が輝き、ガードしていた。  その後、少し立って黒炎がやみ、黒煙も晴れて、ヒョウリとセイラが倒れているのが見えてきた。      僕たちは大慌てで駆け寄った。 抱えていたのは、女の子でセイラだった。セイラは意識を失っている様子だった。  「ヒョウリ!!いったい何があったんだ!?」  僕は無我夢中で叫んだ。    ヒョウリが顔をしかめながら、呻くように、声を絞り出した。  「シスターが・・・き・・・急変した・・・。あれは、シスターじゃない・・・なにかの化け物だ・・・」  僕とガストーンは顔を見合わせて、その意味を理解しようと努力した。    しかし、シスターといえば、シスター・テレサなんだけど、いつも優しかったあのシスターが?  化け物・・・・・・?  そんなことがあり得るのか? まったく僕はその意味が理解できなかった。    「セ・・・セイラは・・・無事か・・・?」  「ああ、こっちに寝かせてある。大丈夫。気を失っているだけのようだ。」  「そうか・・・そ・・・は、よかっ・・・た・・・ゴホッ!」    ヒョウリは口から血を吐いた。よく見ると、お腹のあたりに大きな穴が空いている・・・。 まるで何か肉食獣に噛まれたかのような・・・  「まだ・・・中にキャシー先生が・・・子どもたちは・・・くっ・・・みんな、殺された・・・」  「あぁ・・・ヤツラ・・・和流石建設のヤツラがまた来たんだ・・・」    「何?ヤツラめ!また来たのか?」  そこまで聞いて、ガストーンは建物の方を翻って見た。入り口の扉が開いている。  ガストーンが僕の方を見てこう言った。    「ヒョウリを頼む。俺はキャシー先生を助けに行ってくる!」  そう、言うやいなや、ガストーンは建物の入口の方へ走っていった。  「ガ・・・ガス・・・トーン、だ、だめだ・・・もどって・・・ゴホゴホッ!!」  「ヒョウリ!わかった。もう喋んな!今、救急車を呼ぶから!」 そう言って僕がスマホを取り出した時ーー。  ガツッとヒョウリに腕を掴まれた。    「いや、無駄だ。ぼ・・・僕はもう助からない・・・」  「それより、何があったか手短に話すから、ミギトは逃げてくれ。」  「な・・・!何言ってんだよ!?助からないとかないだろ・・・」    「聞くんだ!ミギト!」  そう言って、ヒョウリが語ったことはにわかに信じがたいことだったが、僕はヒョウリの言うことを全面的に信じられた。 それだけ、長い付き合いだったのと、信頼していたからというのもあるが、ヒョウリがあきらかに死の間際だということがわかったからだ。    僕はヒョウリを抱きかかえ、セイラを横たわらせた。彼女は気を失っていた。  「ゴホっ・・・。」    ヒョウリは息も絶え絶えながらも、その言葉を紡ごうとするが、その口から血を吹き出した。  僕はヒョウリの手を握り、泣き叫ぶように語りかけた。  「しっかりしろ!俳優王になるんだろ!!僕たちは!ヒョウリ、おまえはせっかく主役に選ばれたばかりじゃないかっ!!」  僕は必死でそう叫んだ!ヒョウリは・・・こんなところで死んじゃだめだ・・・。  溢れんばかりの演技の才能があるんだ。僕は、本当に、我も狂わんばかりだった・・・。 ~続く~
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