02◆6月6日-2

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「アンタ……」 ドアを大きく開けて家の主も身を晒した。言葉はそれしか出てこない。 呆れつつ、一方で素直に感心もした。就寝中と思ったのだろう。起こさぬ気遣いに何となく彼らしいなと納得していた。 「お邪魔してたよ。酒も勝手に飲んでたけど、氷が欲しいな。用意してもらっていい?」 不法侵入などお構いなしに丁寧だが図々しく注文を口にする。 シエラにとって侵入方法はもはやどうでもいい。 優秀な暗殺者と聞く。ピッキング能力も優れているのだろう。 問題は彼の存在そのもの。有言実行、本当に現れたのだ。 ウィルの黒い瞳にシエラの姿は新鮮に映った。 自宅ゆえか肌の露出度の高い女物の衣服だ。初対面以来のはずで、男装ばかり見てきたせいか凝視してしまう。 女性にしては長身で、スラリと長い足が美しい。 肌は白く、肩幅は狭く、胸は小さめだが完璧なスタイル。屋外での男装があまりに勿体ない。 下心全開で観察されているとも知らず、シエラは無意味な抵抗は避けて侵入者の求めに応じた。氷を運んで来たのだ。 「ありがとう」と彼は互いの関係なんて何ひとつ知らないかのように穏やかに微笑んだ。
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