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「もう!なんだってとろとろ走ってるんだろうね!」
私は、イライラしながらハンドルを握っていた。後ろから見えるシルエットから判断すると前の車は女が運転する車だと分かる。
「これだから年寄りは嫌なんだよ!」
自分も年寄りのくせに、年寄りかどうかも分からない女に悪態をつく。前のめりにハンドルを握りながら、私はイライラがピークに来ていた。
「ここは50キロだよ!なんで40キロで走ってるんだい!10キロも遅い」
私は前の車を抜こうと決めた。
これがいけなかった。
前の車を抜いた時、運転手を見てやろうと思い睨みつけたまでは良かったが、顔を前に戻した時、自分の車の前に猫が飛び出してきたのだ。それを慌てて避けたらそのまま・・・・・・
「ん?ここはどこだい?」
私は暗い所に寝ていた。起き上がり周りを見渡してみても灯り一つない。
「なんだいここは。真っ暗だよ。ったく」
真っ暗な事にイライラしながら、私は闇雲に歩き出した。いずれどこかに出ると思ったのだ。すると、遠くの方に小さな小さな灯りがあるのに気がついた。
「なんだい、あそこが出口なんだね。大分遠いね。面倒くさい!」
ブツブツ言いながら、その明かりに向かって歩いていく。徐々にその明かりは大きくなりその中に私は入っていった。一瞬、目がくらんだが薄目を開けて周りを確認する。
「なんだい?!」
自分の見ているものが信じられなかった。空だ。後ろを振り返ると、丸く暗い穴のようなものがある。私は空に浮いていた。よく見ると、丸くて暗い穴は煙突のようなものだと分かった。頭上には青い空、ぽかりぽかりと雲が浮いてゆっくりと動いている。
「どういうことだい・・・・・・」
自分自身を見ると、黒のニットに黄色いズボンだ。さっきまで来てた服。しかし、靴は履いておらず裸足である。
「靴はどこ行ったんだい!あれ結構高かったのに」
年金を少しづつためながら買ったお気に入りの靴だったので、自分が履いていないことにショックを受けた。
「靴を探さなきゃいけないね」
私は、自分の状況よりも靴の事で頭がいっぱいになり、自分の家に向かって飛んで行った。
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