隣人

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隣人

「お、見えた見えた」 私は、靴の事だけしか頭になかったので、空から自分の家を探し出したことを不思議だと思わなかった。 玄関に立ち鍵を開けようとカバンを探すが、鍵どころかカバンすらない。 「は?カバンもないよ!全く!」 玄関先で文句を言っていると、隣の奥さん。内山さんがうちに入り私の方に来た。 「なんだい?何か用かい?」 私は靴とカバンがない事を、内山さんにぶつけるように怒って言った。しかし、内山さんは私の事など無視して、まっすぐ私の近くに立つポストの方へ行くと勝手に中を探り出した。 「ちょ、ちょっとあんた!何やってるんだい?人の家の物勝手に!!」 私は慌てて内山さんに言ったが、私の声が届いていないのか内山さんは知らん顔でポストの中にある手紙などを手にとってはしげしげと見ている。殆どが封筒に入っている物だから送り主を見るだけだと思うが、それをみてどうするというのか。別に見られて困るものはないが、黙って見られるのは気分がいいものではない。私は頭に来て、内山さんの近くに行くと思い切り頭を叩いた。しかし、何の手ごたえもなく自分の手は内山さんの頭をすり抜ける。 「あれ?」 不思議に思い、何度も何度も頭を殴りつけたが全てすり抜ける。そんな事をしている間に内山さんは全ての手紙を見終わったらしく、満足そうにするとそそくさと帰っていった。 「なんなの?!」 自分の手が相手をすり抜けてしまったことに驚くのと同時に、内山さんのしていた事に腹が立って仕方がない。 「あの人、いつもああやってうちの手紙を盗み見してたのかしら?憎たらしい!」 怒りが収まらない私は、内山さんの家に行った。 玄関を叩こうと拳を振り上げた時、笑い声が聞こえた。庭の方から聞こえる。庭に回ってみると、内山さん夫婦が二人座って何やら楽しそうに話しているのが、網戸越しに見えた。 「本当よ。○○税務署からの手紙があったの。督促だったりしてね。ふふふ」 「そうだとは限らないけど、あのばあさんなら税金も踏み倒しそうだ。ははは」 勝手な事ばかり言って笑っている。カッと来た私は、部屋に上がり込み家の物をめちゃくちゃにしてやった・・・・・・したつもりだった。
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