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ガチャッと玄関のドアが開いて、慎太郎が入ってきた。
「よう」
俺が出迎えもせずに部屋の奥に戻っていても、文句の一つもない。もう自分の別宅くらいに思ってるんだろう。
一度、合鍵をよこせとか言われたこともあったが、断固拒否だ。
ただでさえ、都内で一人暮らししてる兄貴が合鍵をもってるから、祥子を連れ込んでるときは、念のためチェーンまでかけてる。
いや、まだ最初の一回以来、何をできてるわけでもないんだけどさ。
「食う?」
慎太郎は自宅暮らしなので、帰れば夕飯があるんだろうと思いながら、聞いてみた。自分が食ってるのに、一応客に何も聞かないというのも、ちょっと気が引ける。
「あんの? すげ~。食う食う」
まぁ、チャーハンの一杯くらい食って帰っても、夕飯は入るよな。
大学があるときも、夕方カフェとかで普通に一食分食ってたりもするし。俺より細いくせに、俺より食う。
自分の分と同じくらいのチャーハンと、もう一袋開けてお湯を注いだだけのインスタントスープを、ダイニングテーブルに出してやる。
「サンキュ。いただきます!」
男二人で向かい合って座り、黙って飯を食うという、よくわからない図となった。
俺たちは、打ち合わせ時間短縮のために一緒に食事をすることも多いが、食事中はあまりしゃべらない。5分とかでさっさと食べ終えて、片付けてから必要なことを済ませるタイプだ。
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