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若菜の手を引いたまま、黙ってヨーロッパ調のエントランスを入り、携帯に表示させたバーコードを受付の機械にかざしたあたりで、若菜が状況を理解した。
「慎…ここって…?」
「ん~」
誤魔化しながら手続きを終え、出てきたカードキーを手に進む。
エレベーターも廊下も、普通のホテルのように綺麗で感心する。明るくはないが、薄暗い退廃的な感じはさせていない。
カードキーのナンバーは207。
2階の端の部屋だ。
抵抗せず付いてくるということは、OKということでいいんだろうと判断する。もう、どういう場所かはわかっているだろうから。
入口を開けて若菜を先に入れ、閉めたところでキスを仕掛ける。
「ん…」
若菜はすぐに俺の背に腕を回して応じてくれる。しばらく若菜の唇を楽しんでから、楽器屋の袋は入口の棚に置き、靴を脱いで室内へ。
付き合い始めたその日から、二人で会ったら必ずキスはしてる。場所的に許されない時以外は、毎回結構ちゃんとしたヤツ。むしろ、チュッとか軽いやつのほうを、したことがない。
若菜は俺がファーストキスで、いや俺もだけど。普通がどうなのかはお互い知らない。
でも、若菜は俺のすることに、あまり抵抗しない。終わったあとに苦情を言われることはあっても、やることを止められることは…ない。
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