ピントを写真家に合せた日

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 この時からだ。梨花がカメラに興味を持ち、何度も坂月の写真屋に入り浸り、ついには、借りた金を返す口実の元、師匠坂月に弟子入りした。  写真とは、日常をもっとも絵画的に美しく、明日を魅せるもの。  坂月が、何度も繰り返すので、梨花にも染み付いた掟だ。  梨花にとって、坂月の写真は明日どころか、未来をみせてくれたのだ。ただの寂しさのはけ口ではなく、いっときの楽しみでもなく、その先を見せるものだった。  先を見せすぎて、風景写真に紛れ込んだシンちゃんの浮気現場まで撮ってきたのは、流石に驚いた。  だが、坂月の写真は、ピントをズラしてボヤかしていたとしても、梨花の未来をくっきりさせる。 「おーい梨花。この後の撮影スケジュールの相談なんだけどさぁ」  梨花は、スマホの電源を切り、坂月の声に答えた。
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